私たちの細胞(さいぼう)は、見た目には、他の人の細胞と同じように見えます。
 下のアニメにあるように、顕微鏡(けんびきょう)で見えるAさんの細胞とBさんの細胞は、ほぼ同じです。ここでの細胞は、ひふや臓器(ぞうき)の表面をおおう上皮(じょうひ)細胞を表しています。
 ところが、細胞をこまかく見ると、人それぞれです。指紋(しもん)が人によってそれぞれ違うように、人の細胞の表面にも違った印(しるし)がそれぞれあります。
他人の細胞と自分の細胞は程度の差はあれ、決して、同じではないんです。
つまり、自分は自分なんです。他人が自分になることはできません。
 その印は、MHCクラス1分子と言います。難しい話しをすると、これは主要組織適合遺伝子複合体(しゅようそしきてきごういでんしふくごうたい、major histocompatibility complex; MHC)という遺伝子(いでんし)から作られた蛋白質(たんぱくしつ)です
 さらに、下のアニメで、MHCクラス1分子がたいへん小さいことをしめしています。細胞の表面にたくさんあります。
 また、これらの図ではわかりにくいため、次のアニメから、一つ一つの細胞とMHCクラス1分子を大きくした顔(かお)と冠(かんむり)にたとえて表しています。
漫画として、みてください。
細胞は、それぞれ違う顔で表しています。頭に のっている冠(かんむり)がMHCクラス1分子を表します。たとえば、Aさんの場合、細胞の種類が異なっても、、冠は同じです。
Aさんの細胞
Bさんの細胞
 AさんとBさん、つまり、すべてのヒトの細胞で、それぞれのMHCクラス1分子があります。ただ、この分子の働き、つまり、自分の細胞は自分だけのものですという印の効果(こうか)に強弱はあります。くわしくは、http://ja.wikipedia.org/wiki/MHC#MHC.E5.88.86.E5.AD.90をごらん下さい。
むかって左がAさんの細胞、右がBさんの細胞です。ほぼ同じ細胞です。Aさんの細胞がBさんのところに行くと、アニメのように、Aさんは追い返されます。BさんがAさんのところにいっても追い返されます。
追い返すしくみは、この次に、考えていきましょう。
頭のかざり(冠)、つまり、MHCクラス1分子が違うため、お互い、友達のように、くっつくことはありません。

移植(いしょく)に関係します。
他人(たにん)の皮膚(ひふ)を、自分の皮膚に移植する。つまり、植え付けることは、基本的(きほんてき)に無理です。冠がちがうためです。

 最近、ある巧妙(こうみょう)な細工(さいく)をして、移植できそうですが、このMHCクラス1分子のことを考えて行われています。